Mission.N
キャスターが読みあげたニュースに、あたしと兄は顔を見あわせた。

兄は蛇口を閉めると、ニュースに耳を傾けた。

薄型のテレビ画面に普段から見ている映像が流れた。

レポーターが『小野製作所』の前に立っている。

玄関からスーツを着た人たち――この人たちは警察の関係者だろう――に連行されるように出てきたのは、
「あっ!」

テレビ画面に映ったその人物に、あたしは思わず声をあげた。

「えっ、知り合い?」

兄がハンドタオルで手をふきながらテレビの前に現れた。

「山下専務と福山さん」

あたしはテレビ画面を指差した。

警察に連行されて『小野製作所』から出てきたのは、山下専務と福山さんだった。
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