Mission.N
まさか、彼らが産業スパイだったなんて…!

そのうえアメリカの企業に情報を送ってたって…!?

「夏梅、大丈夫か?」

兄が顔を覗き込んできて、背中をさすってきた。

そう声をかけられるほどに、あたしはひどい顔をしていたようだ。

「うん、驚いちゃって…」

呟くように答えたあたしに、
「まさか、自分のところの会社の専務と…えーっと、福山さんはその秘書だったんだっけか?」

確認するように聞いてきた兄に、あたしは首を縦に振ってうなずいた。

「ねえ、お兄ちゃん」

「何だ?」

あたしは唇を閉じた。

心臓がバクバクと、今朝のようにまた暴れ始めた。

今日は何て、心臓に悪い日なのだろう。
< 73 / 92 >

この作品をシェア

pagetop