Mission.N
そんなこんなで社長の秘書を務めて、今年でようやく1年を迎えた。

「じゃ、お先に失礼するわね」

福山さんがカバンを手に持つと、椅子から立ちあがった。

「はい、お疲れ様でした」

パソコンとにらめっこをしながら、あたしは返事をした。

「いつもご苦労様。

仕事で忙しいのはわかるけど、たまには早く帰りなさいね」

そう声をかけた福山さんに、
「ありがとうございます。

それよりも福山さん、大丈夫ですか?

学童の時間が終わっちゃいますよ」

あたしは声をかけた。

福山さんは小学生の娘さんを育てているシングルマザーなのだ。

「あら大変、では失礼」

「はーい、お疲れ様でしたー」

バタンとドアが閉まったのと同時に、足音が遠くに行くのを待った。
< 8 / 92 >

この作品をシェア

pagetop