Mission.N
社長の方に顔を向けると、
「警察に捕まるのは、あたしです。

兄は悪くありません。

勝手に行動したあたしが悪いんです」

あたしは言った。

「警察に何か行かせませんよ」

社長の唇が動いて、音を発した。

「えっ…」

あたしと兄は声をそろえて、聞き返した。

警察に行かせないって、どう言うことなの?

「逮捕された彼らとは違い、妹さんはお兄さんにだけスパイ行為を行っていました。

事件的には小さい方だと、俺は考えています。

美しい兄妹愛と言ったところですかね」

社長はスーツの胸ポケットに手を入れると、そこから何かを取り出した。

リップクリームだった。
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