イレカワリ
それに二階にまで聞こえて来たあの声は、間違いなく歩についてなにか公論している様子だった。


「どうして俺に隠すんだよ」


あたしはお父さんへ向けてそう言った。


「お前には関係のないことだ」


お父さんはあたしと目を合わせようとしない。


嘘をついているからだ。


「俺にも関係あるよ。家族の事だろ?」


あたしは食い下がってそう聞いた。


なんでもいい、海や歩について知りたかった。


それを知ることであたしがこれからどうすべきなのかが見えてくるはずだった。


「歩、あなたには本当に関係ないことだから」


お母さんが震える声でそう言った。


どうしても歩に聞かせたくない事なんだろう。


「お願いお父さん、お母さん、俺にも教えて。ここまでの喧嘩の原因を」


真剣な表情で、2人から目をそらさずにそう言った。


2人は困ったような表情を浮かべて目を見交わせる。


「わかった……。それなら歩に1つ質問があるんだ」


お父さんが諦めたような声でそう言った。


その瞬間、嫌な予感が胸によぎった。


どす黒い、真っ黒な予感。


聞かない方がいいと言うことはすでにわかっていた。

< 101 / 125 >

この作品をシェア

pagetop