イレカワリ
好きな女の値段なんて聞きたくなかった。


「マホは大丈夫なんだろうな?」


「もちろん、もうすぐ目が覚めるさ」


歩はそう言いながら洗面所へ向かい、剃刀を持って戻ってきた。


再びベッドに横になり自分の手首に刃を押し当てる。


「おい、なにしてるんだ」


俺は慌てて止めに入った。


突然の出来事に困惑する。


「マホが目覚める前に終わらせておかなきゃいけないからな」


歩はそう言うと、躊躇することなく剃刀で手首を切りさいたのだ。


真っ赤な血が大量に流れ始める。


歩が脈打つごとにその流れは速くなる。


「おい、歩!!」


俺は思わず歩の手を握りしめていた。


こんな場面でほっておくなんてできなかった。


これが、すべて歩の計画だったなんて知らずに……。
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