イレカワリ
しかし、次の瞬間あたしの体は石段から落ちていた。


体のあちこちをぶつけながら、止まるすべもなく長く細い石段から落下していく。


その間はまるでスローモーションのように見えた。


空が見えて、灰色の石段が見えて、同じように落下している男子生徒が見える。


不思議と体の痛みを感じる事はなく、あぁ、大丈夫なのかもしれないな。


と、ぼんやりと考える。


しかしあたしは自分の体の落下を止めることもできず、そのまま地面に打ちつけられた。


突然階段から落ちて来たあたしと男子生徒に、近くにいた近所の奥さんたちが目を見開き、悲鳴をあげた。


大丈夫です。


痛みはないから。


そう言おうとしても、声にならなかった。


視界は歪み、意識が朦朧としてくる。


あたしが最後に見たのは、目を閉じた男子生徒の姿だった……。
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