イレカワリ
恐る恐るリナの方へ視線をやると、案の定鋭い視線を歩へ向けているのが見えた。


あぁ……最悪。


こんなことならリナのことをちゃんと歩に話しておくべきだった。


歩からすればリナは可愛いクラスメートだから、恐怖なんて微塵にも持っていないのだ。


「あ、あのさ。後でもいいかな?」


あたしは歩へ向けてそう言った。


しかし歩は「今がいいんだけど」と、引き下がらない。


その態度にリナの表情は更にこわばって行く。


クラスで2番目にカッコいい歩にあたしが声をかけるなんて、リナにとってはあり得ないことなんだ。


「で、でもさぁ……」


どうにか歩を諦めさせようとする。


その時だった。


歩があたしの手を握り歩き出したのだ。


あたしはそのまま引っ張られるようにしてついて行く。


「ちょっと……!」


あたしの力くらいならきっと引き離す事はできると思う。


だけど、細い手に掴まれるとそれを拒むことが申し訳なくなってしまった。
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