イレカワリ
☆☆☆

それから20分後。


あたしはクローゼットに置かれた段ボールの箱を開けて、その前に座り込んでた。


クローゼットの奥の方に忘れられたように置かれた段ボール。


その中には歩が幼かった頃の思い出が詰まっていた。


産れたころの写真や、幼稚園、小学校の運動会の写真。


そのどれもかとても可愛らしくて、あたしは頬を緩めた。


「歩って昔から可愛かったんだぁ」


あたしはそう呟いて写真の歩を撫でる。


だけど、今のところ海という人につながるものは何も出てきていなかった。


「でもまぁ、これを見れたからラッキーだったなぁ」


あたしは1人で満足してニヤニヤと笑う。


とても可愛い歩の写真を一枚取り出し、机の上に飾った。


こんな可愛い歩を段ボールに押し込めておくなんてもったいない。


気に入った写真を飾ったあたしは、段ボール蓋をしてクローゼットへと戻した。


海って人の事は深く考えなくていいか。


歩の記憶が戻れば自然とわかる事だし、今はそっとしておこう。


そう思った時だった。


足元に一枚写真が残っていることに気が付いた。
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