イレカワリ
☆☆☆

いつもの石段に、歩はすでに来ていた。


「おはようマホ」


久しぶりに自分の名前で呼ばれて、自分がマホであることを思い出す。


「おはよう歩」


あたしはそう返事をして、肩を並べて歩き出した。


「昨日、また考えてたんだ」


歩の言葉にあたしは首を傾げる。


「何を?」


「入れ替わりの戻り方」


あぁ。


そっか。


今あたしたちが考えることといえば、それしかないよね。


海の事がきになりすぎて、すっかり忘れてしまっていた。


「同じ衝撃を与えても、キスをしてもダメだったろ?」


そう言われて、あたしは一気に顔が熱くなってしまった。


キスした時の事をリアルに思い出し、自分の唇に触れる。


「もう、流れに身を任せるしかないと思うんだ」


真剣な表情でそう言った歩に、あたしは「へ?」と、マヌケな声で返事をしてしまった。
< 65 / 125 >

この作品をシェア

pagetop