イレカワリ
☆☆☆

2人で学校へ登校してくると、数人の女子生徒から悲鳴が起こった。


分かっていたことだけれど、しばらくはこんな日々が続きそうだ。


リナたちが何かして来る気配はないけれど、用心しておいた方がいいかもしれない。


あたしは歩と目配せをして、注意を促した。


歩は小さく頷き、席へと向かう。


「よぉ歩! 昨日は楽しかったなカラオケ!!」


席へ座るや否や、純がそう言ってあたしの肩を抱いて来た。


純とのこの距離は少しずつ馴れてきている。


「あぁ、また行こうな」


あたしは調子を合わせてそう言った。


「昨日は海の墓参りに行けなかったから、今日行こうと思うんだけど」


純にそう言われ、あたしは言葉を失った。


ここはどう返事をすべきなんだろうか。


歩は海の事を忘れている。


だけど、昨日純の前で調子を合わせて知っている素振りを見せてしまった。


あたしは困ってしまい、視線を泳がせた。


「なぁ、歩?」


グイッ引き寄せられて、純の香水の香りを鼻先に感じた。


「う、海ってなんのこと……?」


あたしは曖昧に返事をして、純から視線をそらせたのだった。
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