イレカワリ
☆☆☆

それからあたしは歩と2人で廊下へ出てきていた。


廊下を行きかう字生徒たちの視線を感じるけれど、この際気にしないことにした。


昼休憩はあと10分ほどで終わってしまうから、移動している時間がないのだ。


「あのさ、歩……」


「なに? 深刻な顔して、何かあった?」


心配そうな表情を浮かべてそう聞いてくる歩に、なんだか胸の奥がチクリと痛んだ。


あたしは歩の周りを嗅ぎまわっているから、その罪悪感があるのかもしれない。


「純に『今日はあの日だから』って言われたんだけど、『あの日』ってなんの事?」


そう聞くと、歩はハッとしたような表情を浮かべた。


「そうだった。すっかり忘れてた。ちょっと、ここで待ってて」


歩はそう言うと、一旦教室へ戻り茶色い封筒を持って戻ってきた。


「はいこれ。これを純に渡せばわかるから」


茶色い封筒を受けとり、あたしは首を傾げた。


封筒はしっかり糊付けされていて中身は確認できないようになっている。


「これ、なに?」


中身が気になり、思わずそう聞く。


すると歩はあからさまに嫌そうな顔をした。


「なんでもない。純と俺の秘密だから」


「そ、そうなんだ」


あたしはそう言い、ポケットに封筒をしまった。


あまり深く詮索するのはよくないのかもしれない。
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