イレカワリ
☆☆☆

あたしは手早く着替えをして、家を出た。


歩が言った通り、家を出る時には何も言われなかった。


でも、今なんの用事があるんだろうかと疑問になる。


こんな時間に呼び出すなんて非常識だ。


そう思いながらも足を急がせた。


いつもの石段を駆け下りて真っ直ぐ学校へと向かう。


校門前に人が立っているのが見えた。


黒い上下で統一した純の姿だった。


その姿はまるで喪服のようで、ドキッとしてしまう。


「よぉ、呼び出して悪いな」


純は全く悪びれた様子もなくそう言った。


「別に、いいけど……」


あたしは純を見てそう返事をした。


純は歩の弱味を握っている。


純と歩の関係は友人ではなく、脅迫している側と、されている側だと思っていた方がよさそうだ。


下手に純を怒られればなにが起こるかわからない。


歩もそれを理解しているから、こんな時間に呼び出されても無視できなかったんだろう。
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