イレカワリ
暗闇の中で動く2つの影。


その声は時折楽しそうな笑い声を上げている。


あたしはとっさに電信柱に身を隠した。


2つの黒い影が街灯の下を通った瞬間、あたしは息を飲んだ。


あたしが……あたしの姿をした歩が、真っ赤なドレスを着て見知らぬサラリーマンと腕を組み、歩いているのだ。


サラリーマンは時々歩の肩を抱き寄せて、キスをした。


歩はなんの抵抗もなく、それを受け入れる。


あたしは呼吸が荒くなっていくのを感じてた。


なに……してるの?


サラリーマンと歩はあたしに気がつかずに電信柱を通りすぎる。


2人はそのまま誰もいない家へと吸い込まれていった。


どう見ても普通じゃないあの2人。


今すぐ家に行って事情を説明してもらいたい。


なにより、2人きりにするべきじゃない。
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