イレカワリ
☆☆☆

翌日。


あたしは制服姿に着替えて石段の前にやってきていた。


いつもの歩との約束場所。


歩が車でまだ15分もあったけれど、家でのんびりしているような気分じゃなかった。


昨日衝撃的な場面を見てしまったせいでロクに眠れず、頭が痛い。


それでも、あたしは歩に聞かなければいけなかった。


長い長い15分が経過して、ようやく道の向こう側から歩が歩いてくるのが見えた。


歩はいつもと変わらぬ足取りでこちらへ向かう。


あたしと視線がぶつかると、すぐに笑顔になった。


「おはようマホ」


その声にあたしは無反応だ。


歩を睨み詰める。


「マホ、どうかした?」


歩は不思議そうな表情を浮かべてそう聞いて来た。


「あたし、昨日見たの」


「見たって、なにを?」


「あんたが知らないサラリーマンと歩いている所を」


そう言うと、歩は瞬きを繰り返した。
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