イレカワリ
何年か前にあたしも習った事のある中学の授業内容が書かれている。


海はここで勉強をしていたのだろう。


その姿は安易に想像ができた。


「おかしい……」


あたしは呟いた。


この部屋、海が亡くなった時のまま残しているのだとしたら、ノートや教科書が開きっぱなしなのは違和感があった。


海は自殺だった。


自殺をする前の人間が熱心に勉強なんてするだろうか?


ノートも教科書も広げたまま、衝動的に手首を切ったりするだろうか?


そう考えると、海は歩に殺されたと考える方が自然だった。


だけど、嫌がる人間を無理やり浴槽まで連れて行き、手首を切るなんて到底できないだろう。


海も歩も体格は同じだ。


歩が一方的に有利に事を運ぶことは難しい。


あたしは海の部屋から出て大きく首をふった。


海と歩の間に何があったのかは、分からない事だらけだ。


入れ替わる方法も全然わからない。


あたしは大きなため息を吐き出したのだった。
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