友達、ですよね?
翌日、朝。
目を覚まして真っ先に思い出したのは、昨日の遥だった。夕日に照らされてきらきらと輝く遥の茶髪、赤い頬…
昔から弱くて、なよなよしてて、泣き虫だった遥。
もう十数年一緒にいるけど、あんな顔を見たのは…初めてだった。
「あぁあ!!もう!!意味わかんないっ!!」
もふもふの抱き枕を思い切り抱きしめる。
もう一回って、なによ…
私はずっとただの幼馴染だと思ってた。なのに、なのに…
『僕、沙奈ちゃんが好きなんだ…!』
…ぼんっ!!
顔に熱がたまっていくのがわかる。きっと今の私は顔が真っ赤だろう。
「今日も遥来るのかな…」
家が隣同士だからいつも登下校は一緒だったけど、昨日あんなことがあったし今日は来ないかな…
…と、思ったその時だった。母の声が聞こえたのは。
「さーちゃ~ん!遥くん来てるわよー!!」
!!
き、来た!!
意味もなく部屋の鏡で身だしなみをチェックしてばたばたと階段を下りる。
降りた先にはいつもと変わらない様子で立っている遥がいる。
「おはよう、さーちゃん」
何事もなかったかのように遥が笑う。
「さーちゃんって呼ばないでってば!」
私も平常心を装っていつも通りの会話をする。
「昔はそう呼んでたのに?沙奈も僕のことはーくんって…」
「小さい頃の話でしょ!今そう呼んだら恥ずかしいじゃん!」
遮るようにそう言い放つ。昔の話を何でも知っているから幼馴染は厄介だ。
「ふぅん?なんで恥ずかしいの?ただの幼馴染なのに」
私の顔を覗き込むようにして遥が言った。にこにこしてるけど、私は知っている。これは意地悪モードの顔だ。
「僕のこと、異性としてみてるって思っていいのかな?」