ありがとうを、どうしても。
1
「咲子、愛、ほら笑って笑って!」
満面の笑みで、
カメラを構えるお母さん。
なぜそんなにお母さんが喜んでいるかというと、
お姉ちゃんが、
難関大学に受かったからだ。
「あらあ、咲子いい笑顔ねぇ!ほんと、絵になるわぁ!」
そんなことを言われているお姉ちゃんの隣で、地味に笑顔を作る。
日比谷 咲子(ヒビヤ サキコ)。
これはお姉ちゃんの名前だ。
勉強でも、ルックスでも。
お姉ちゃんは、完璧だった。
だから私は小さい頃から、お姉ちゃんと比べられながら生きてきた。
『愛ってさあ、お姉さんと全く似てないよねえ!!』
『愛のお姉さん、キレー!』
『どうして咲子には出来るのに、あんたはできないの!!』