ありがとうを、どうしても。


「咲子、愛、ほら笑って笑って!」


満面の笑みで、
カメラを構えるお母さん。


なぜそんなにお母さんが喜んでいるかというと、


お姉ちゃんが、
難関大学に受かったからだ。


「あらあ、咲子いい笑顔ねぇ!ほんと、絵になるわぁ!」


そんなことを言われているお姉ちゃんの隣で、地味に笑顔を作る。


日比谷 咲子(ヒビヤ サキコ)。


これはお姉ちゃんの名前だ。


勉強でも、ルックスでも。


お姉ちゃんは、完璧だった。


だから私は小さい頃から、お姉ちゃんと比べられながら生きてきた。


『愛ってさあ、お姉さんと全く似てないよねえ!!』

『愛のお姉さん、キレー!』

『どうして咲子には出来るのに、あんたはできないの!!』


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