Double Cool
 そこには複雑なものも含まれていたけれど、それでも後悔は微塵とも見えない。




 「お前のところの親御さんも心配してるだろ?」

 「………関係ないわよ」




 実際、大学時代からベストカップルと言われ、美澄の両親も一流企業に勤める修司の肩書きに大いに喜び、安堵していたところがある。


 仕事に打ち込むばかりで、娘の婚期が遅れても、それでも修司という『将来有望な未来の婿』がいてくれるのだから、と大目にみられていたのかもしれない。


 が…、修司が脱サラして、将来どうなるかもわからない荒海に漕ぎ出したことを知った時の美澄の両親の嘆きと失望は、本人ではない彼女でさえ眉を顰めるものがあった。


 ましてや、長男として家族の期待を一心に受けていた修司の場合はなおさらのことで、彼の両親にしてみればいかばかりか失望も大きかったことだろう。




 「お父さん、あいかわらず会ってくださらないの?」

 「まあ、○菱の本部長を勤めるオヤジとしては、ね。もともと、自分の息がかかっていないところに勤めたこと自体気に入らなかったんだろうし」

 「……うん」




 わりにあっけらかんとしている修司よりもむしろ美澄の方がシュンとしてしまう。




 「美澄はオヤジのお気に入りだからな。…お前のことはどうするんだと、引き合いにまで出されたよ」

 「っ!私はっ、私は、修司の夢を応援してるわっ」





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