Double Cool
 「…行きたい」

 「それなら迷うことはないだろう?」




 迷うことがない?


 本当にそう修司は思っているというのか。


 いつもは彼のその冷静な対応に安心させられ、確信を持つことができるというのに、なぜかその時はその冷静さが許せない気がした。




 「修司はいいの?」

 「…………」 

 「私たち、もう何年、こうして付き合い続けてるの?私ももう29才、修司は31才。世間の人たちは、とっくに結婚していて、中には子供がいる人だってたくさんいるのよ?」




 いままでそんなことを自分も修司も気にしたことなどなかったはずだ。


 それなのに、今、なぜこの時―――それも自分の都合で申し出ようとしている別離なのに、なぜ彼をなじる言葉を自分は言おうとしているのだろう。


 …違う、別離なんかじゃない。


 そうよ、たった5年のことじゃない。


 そう本当に思っているのに…。


 自分の不安が何から来るのか、いや、その不安が増してしまっているのがどうしてなのか、ふいに美澄は気がついた。




 「結婚…考えてくれたのよね?」

 「美澄」

 「そうなんでしょ?修司も夢を叶えて、これからの未来の目処がたった。私の仕事も安定して、夢が叶ったとまでは言わないまでも、結婚しても支えあっていける。そう思ってくれたんでしょ?」





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