Double Cool
 「……俺には何も言えない」

 「修司」

 「正直…そうだな。正直、お前が今、この時期、俺から何年も遠く離れてゆくことを思えば、凄くキツイ」

 「…………」

 「俺も夢が叶ったとはいえ、それはまだその夢の入口…序の口に過ぎないからな」




 それはそうだろう。


 とりあえず開店の目処はたった。


 従業員を揃え、仕入先やその他もろもろの契約を済ませたとはいえ、それが軌道に乗るのは何年も先の話だ。


 貯蓄があったとは言え、それだけではとても賄えなえず、借金もある。


 いくら周到に準備をしてきたとは言え、必ずしも成功するとは誰にも言えまい。


 修司は強い男だ。


 けれど、時には美澄の支えも必要とすることもあるだろう。


 またそうでなければ、美澄が彼を愛する甲斐もない。


 修司に支えられるだけでなく、支えることもまた彼女の愛のカタチであるのだから。




 「けど、俺のために、お前の夢を諦めてくれとはとても俺には言えないし、言いたくない」





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