Double Cool
4.未来へ
 「イタリア人は、美しい人生ってものを知ってる人種なんだ」




 互いの素肌に素肌をすりあわせて、満ちたりた温もりにぬくぬくと浸り合う。


 伸ばした指先に触れる、修司の顎の下に伸び始めた柔らかな無精ひげの感触さえも気持ちがいい。




 「…なんだよ、くすぐったい」

 「だって、髭が伸びてる」

 「しょうがないだろ?シャワー浴びないで寝たから」

 「そうだね、私もだわ。明日、一緒に浴びる?」




 なんて。




 「いいねぇ。大胆だな」


 「いまさら?」


 「だな」




 くすくす笑いあうこの穏やかな空気がとても愛しくて、幸せ。


 ホンの数時間前まで、冷たい空気に涙したことなんて嘘のようだ。


 それでも心の奥底のどこかに、ひんやりとしたシコリがまだどこかに残っているのを感じる。


 …それはそうよね。


 まだ何も問題は解決していない。


 いや、それさえも美澄の心積もり一つで解決する事柄に違いはなかったけれど。


 でも今は、この穏やかで安らかな時間にただ揺蕩っていたい。


 明日には向き合わければならないのだろうから。




 「で?イタリア人的な、美しい人生って?」





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