Double Cool
「………うん」
なんとなく返事をするのが気恥ずかった。
大学時代から何年も付き合って、何度となくともに夜を過ぎして、朝を迎えてきたというのに、何度そんな夜や朝を繰り返しても、修司と会うたびにトキメくし、照れ臭い。
「ごめんね、修司の脱サラ&トラットリア(※イタリアの家庭料理を供するレストラン)開店のお祝いなのに、その修司にばかり料理させたり動かさせたり」
向かい側に座った修司が甘く微笑んでくれる。
初めて出会った頃とほとんど変わらない若々しい美貌が、まるで時を止めてしまったかのように時々美澄に錯覚させる。
けれど、カッチリとしたスーツに身を包み、いかにも仕事ができる男然として、常にスケジュールに追われていたエリート・サラリーマンの姿はそこにはない。
「豪華な花もくれたし、チョコもくれたじゃん?」
「……一週間遅れのバレンタインも兼ねたやつだけどね」
こじんまりとした…けれど男の一人暮らしの部屋とは思えない小奇麗なダイニングキッチンの片隅には、大きなフラワーアレンジメントが飾られている。
チューリップをメインにカスミ草など数種類の花で花屋に作ってもらった花束だが、特に何を意識したというわけではなく、お祝いに相応しい華やかで、だがあまり派手すぎない花で作ってもらった、それだけだった。
けれど、作ってもらっている間、ふと暇つぶしに視線を巡らせた先―――ちょうどチューリップの花言葉が表示されていて、ひどく気恥しかったことを思い出す。
「いいんだよ」
「え?」
つい物思いに耽ってしまい、修司の言葉を聞き逃した。
けれど、特に気を悪くした風ではない。
しっかりした見た目とは裏腹に、うっかりしている性格の美澄をよく理解して、許容してくれる男性、それが修司だった。
「ごめんなさい、聞いてなかった」
「ん、いつものこと?」
「…むぅ、だけどさ」
テーブルについた片肘に顎をついて、美澄をからかうように…だが熱く見つめて修司がそっと囁く。
「こう言ったんだよ。……美澄は、ただそこにいてくれるだけでいい」
なんとなく返事をするのが気恥ずかった。
大学時代から何年も付き合って、何度となくともに夜を過ぎして、朝を迎えてきたというのに、何度そんな夜や朝を繰り返しても、修司と会うたびにトキメくし、照れ臭い。
「ごめんね、修司の脱サラ&トラットリア(※イタリアの家庭料理を供するレストラン)開店のお祝いなのに、その修司にばかり料理させたり動かさせたり」
向かい側に座った修司が甘く微笑んでくれる。
初めて出会った頃とほとんど変わらない若々しい美貌が、まるで時を止めてしまったかのように時々美澄に錯覚させる。
けれど、カッチリとしたスーツに身を包み、いかにも仕事ができる男然として、常にスケジュールに追われていたエリート・サラリーマンの姿はそこにはない。
「豪華な花もくれたし、チョコもくれたじゃん?」
「……一週間遅れのバレンタインも兼ねたやつだけどね」
こじんまりとした…けれど男の一人暮らしの部屋とは思えない小奇麗なダイニングキッチンの片隅には、大きなフラワーアレンジメントが飾られている。
チューリップをメインにカスミ草など数種類の花で花屋に作ってもらった花束だが、特に何を意識したというわけではなく、お祝いに相応しい華やかで、だがあまり派手すぎない花で作ってもらった、それだけだった。
けれど、作ってもらっている間、ふと暇つぶしに視線を巡らせた先―――ちょうどチューリップの花言葉が表示されていて、ひどく気恥しかったことを思い出す。
「いいんだよ」
「え?」
つい物思いに耽ってしまい、修司の言葉を聞き逃した。
けれど、特に気を悪くした風ではない。
しっかりした見た目とは裏腹に、うっかりしている性格の美澄をよく理解して、許容してくれる男性、それが修司だった。
「ごめんなさい、聞いてなかった」
「ん、いつものこと?」
「…むぅ、だけどさ」
テーブルについた片肘に顎をついて、美澄をからかうように…だが熱く見つめて修司がそっと囁く。
「こう言ったんだよ。……美澄は、ただそこにいてくれるだけでいい」