Double Cool
 「…修司?」

 「ああ、おはよう」

 「…おはよう」




 やっと彼が返事を返してくれたことに、美澄は小さく安堵の息を落とす。




 「シャワー、まだだろ?」

 「え?あ、うん」

 「ごめん、実はまだ朝食の支度ができてなくって、美澄がシャワーを浴びてる間に軽く支度をしておくから、行っておいで?」

 「いいよ、今日くらい私が作るし」

 「俺は休みだけど、お前は今日仕事だろ?」

 「まあ」




 朝、シャワーを一緒に浴びようと言っていたのではなかったか。


 彼女にしてみても、冗談半分本気半分、ピロートークの一つだったので特にこだわるところではなかったけれど、なぜかその時は修司を一人残すことがいやで、朝の爽やかな空気には不似合いな誘いをかける。




 「修司も、一緒に浴びない?」

 「……いや、俺は後でいいよ。お前と一緒にシャワーなんて浴びてたら、それだけじゃすまなくなるし」

 「もう」




 いつもの会話、いつものやり取り、それなのに、それが妙に空々しいなんて。


 上滑りな会話。


 それ以上言い募る言葉もなく、美澄は言われるままにおとなしくシャワーへと向かう。


 ガタッと椅子から立ち上がる気配に、




 「修司、やっぱり朝ご飯、いいよ」

 「いや…、一日の始まりは朝食からだよ。でも、今からだと簡単なものしか作れないけど、それでもいいかな」




 美澄に否やがあるはずもない。




 「…うん、いつもありがとう。お願いします」





< 33 / 49 >

この作品をシェア

pagetop