Double Cool
 朝食の席は、奇妙にしめやかなものになってしまっていた。


 いつものように、優しい光に満ちた朝。


 本当に、そのはずなのに、なぜか互いの顔を見ることさえも気後れして、沈黙が重く互いの心にのしかるなんとも気まずい時間。


 刻一刻と美澄の出勤時間が迫っている。


 こんな状態のまま、またしばらく修司に会えなくなる…そんなことが良いことのはずもない。


 美澄は先ほどまでに決意した言葉を口にしようと我知らず唇を舌で湿らせ、小さく深呼吸を繰り返した。


 そして―――、




 「…あのね、修司」




 だがしかし、今度は、修司が片手をあげて、やっと絞り出そうとしていた美澄のその言葉をハッキリと遮り、彼女の顔をジッと見返した。


 そのあまりに真剣な目に、思わず口にしようとしていた言葉が喉の奥へと消えていってしまう。




 「今度は、俺の話を聞いてもらう番だろ?」

 「…修司」

 「俺も一晩考えた」




 いつも真っ直ぐに力強く、時には甘く彼女を見つめてくれていた修司の目が、かすかに揺らめいていたように美澄には感じられて、キュッと胸の奥が振り絞られるように痛んだ。




 「…別れよう」

 「え?」

 「別れよう、美澄。…お前はフランスに行けよ」




 大きく目を見開いた美澄は、気が付けば震える唇を片手で塞いで、溢れそうな悲鳴を懸命に抑えていた。





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