Double Cool
 何かと博識で、あえて仕事に繋がるあらゆる雑学を仕入れることを好んでいる男だから、あんがい知っているかも知れない。


 今となっては皮肉な意味合いにも思えたけれど、美澄にとってその花言葉は彼女の真実だった。


 それなのに、こんな未来を選び取ろうという自分が、いかにもキチガイじみて笑いたくもないのに笑ってしまいそうになってしまう。


 …いやだ。


 そう思うはしから笑い声ではなく、嗚咽が溢れそうになって、何度も唾を飲み込み、熱く火照る頬を撫でて涙を堪えた。




 「…美澄」




 背後から聞こえる修司の声。


 振り向きたい気持ちと、泣いてしまっている顔を見られたくない気持ち。


 でもたぶん、修司には気がつかれてしまっているだろうけれど。




 「元気で」

 「……ええ、修…司も。トラットリアの、成功を祈ってる」

 「ああ」




 もう後ろは振り返らない。




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