Double Cool
5.そして…。
 「はぁ~、日本もずいぶん事情が変わっちゃったのね」

 「…そうですか?」




 キョトンとしている後輩に肩を竦めて、周囲を改めて見回す。




 「だって、私が日本を発った頃は、国際線が出ていたのは成田オンリーだったのよ」

 「ああ」

 「それが今では、ってやつでしょ?」




 なんだか浦島太郎な気分の美澄とは裏腹に、フランスから一緒に帰国した後輩にしてみれば、そんな彼女のお登りさん的発言が面白かったようで、クスクスと笑われてしまう。




 「なんだか、江島先輩ってホント、イメージ違いますよね」

 「そうかな?」

 「初めてお会いした時には、いかにもクールで、仕事のできるキャリアウーマンって感じで、とっつきにくい印象でした」

 「はは、よく言われるかも」




 人見知りというわけでもなかったけれど、人懐っこい性分でもない彼女はあえて社交的に振舞わなければ、他人に忌避されがちなところがあった。


 それでもそんな自分にコンプレックスを抱かずにいられた時期もある。


 今も自信に支えられて人付き合いを苦に感じることは少なかったけれど、それでもあの頃―――修司がいてくれた時のように、リラックスできることはほとんどなくなっていた。


 あれから…美澄がフランス支社へと転勤になってから、6年の月日が過ぎていた。





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