Double Cool
 微笑み返す美澄の顔には複雑なものがあったけれど、幸いサングラス越しには気がつかれなかったようで、興味津々に見られるばかりだ。




 「残念。大学時代の親友なの」

 「へえ?」

 「たまたまこっちの学会に参加していて、東京に帰る予定を繰り上げて同乗させてくれるって言うから、少しフラフラとあちらこちら見て帰ろうかなって」

 「はあ、なるほど」




 嘘ではない。


 だが、その親友に連絡をとった意図は別にあった。


 大学時代の友人だった彼は、修司とも深く親交があり、今も付き合いがあるはずだ。


 …未練すぎるわよね。


 そうは思うけれど、それでも多少なりとも彼の近況が知りたかった。


 一枚だけ、迷惑だとは思ったけれど、6年ぶりの帰国を知らせずにはいられず、ハガキを送ってしまっていた。




 『お久しぶりです。6年ぶりの帰国を果たすことになりました』




 …だから、なにって感じだけど。




 それでも親友を通じて、彼がまだ独身だと知っていたからすることができた暴挙。


 返事は…ない。





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