Double Cool
 …え?


 笑い含むその声音に、美澄の脳裏が真っ白になった。

 
 …まさか。


 …そんなはず。




 「黙っていればクールな美人で通るのに、人間ってそう変われないもんだと感心するよ」




 信じられない思いに固まる彼女をよそに、手早くそれでも崩れて床に落ちた数冊の本を拾い上げて片付けてくれる。




 「………なんだよ?お礼、言ってくれないの?」




 震える唇を開いたり閉じたりして、なんとか覚悟を決める。


 ゆっくりと振り返った先―――6年前とほとんど変わらない柔らかな美貌の男が、手に大ぶりの花束を持って優しく彼女を見下ろしていた。




 「修司………」

 「場所を勝手に移動するなよ、探せないだろ?」




 まるで6年前の別れがなかったかのように、あるいは6年間のブランクを感じさせない言葉。


 昨日別れて、今日また会っただけのような自然体。




 「まさか、俺のこと忘れた?」





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