Double Cool
 美澄が修司と出会ったのは大学1年生の入学式でのことだった。


 特に運命的な出会いというわけでもなく、サークルに勧誘する在校生たちの中に、修司もいた。


 いわゆる日本の最高学府、超難関校と言われる大学に入学した美澄にとって、何もかもが目新しく、立派に見えた。


 が、むしろ周囲の学生たちにとっての美澄もそうだったようだ。


 特にわりに小奇麗な容貌のせいか、あるいは構えてしまう性格のせいか、出身の田舎でもよく言えば一目置かれる、悪く言えば浮きがちな彼女は周囲から高嶺の花扱いで、気安く話しかけてくれる男の子もいなかった。


 美澄の周囲に集まってくるのは、同族で固まろうとするいわゆるエリートと呼ばれる頭脳集団的な秀才たちか、興味本位で恋愛遊戯を仕掛けてくる自意識過剰で軽めの男たちの両極端。


 美澄も恋愛を求めて東京に出てきたわけではなかったからそれでかまわない、そんな風に虚勢を張っていたように思う。


 それでも彼女も年頃の女性、素敵な男性との出会いや恋を夢見ないわけではなかった。

 
 そんな時に修司に声をかけられたのだ。




 『見かけによらず、意外におっちょこちょいなんだな』




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