Double Cool
 ついホロ酔加減で、修司との会話に夢中になりすぎていた。


 肘をついたところ、テーブルギリギリに置いておいたフォークが鈍い音を立てて床へと滑り落ちた。




 「…ふぅ、危ないだろ」

 「ご、ごめんなさい」




 美澄がフォークを拾う前に、修司がさっさと動いてくれて、彼女の足元に転がったフォークを拾いあげてくれる。


 呆れているようではなかったけれど、美澄の何杯目になるのだかわからないワインを取り上げ、ぐっと飲み干されてしまう。


 顰めた顔は、自分が購入したくせに、あまり芳しいものではなかった。




 「…うっ、きっつぅ」




 修司はあまり酒に強い方ではなかった。


 下戸というほどではないが、うわばみの美澄と張り合うほどではなく、まさに美味い酒をほどほどに、という程度。


 強いだけに酒好きでもある美澄が、せっかく気に入っていた美味しいお酒を横取りされて、憮然とする。




 「ひどい、最後の一杯だったのに」

 「いくら美味くったって、お前飲みすぎ。ほとんど一人でボトル一本開けちゃっただろ?」 

 「せっかく美味しいのに、修司がほとんど飲まないからでしょ?」




 文句が矛盾していることに、酔った美澄の頭では気が付けない。




 「だから、最後の一杯はもらったの。これ以上、飲ませるとお前、いろいろ支障がありそうだからな」





< 6 / 49 >

この作品をシェア

pagetop