トンネルを抜けるまで
1
落っこちた先は意外と明るかった。それは晴れの日の空の様な明るさじゃなく、マグマが煮えたぎっているかの様な真っ赤な人工の光。マグマは無いけど、全体的に汗ばんじゃう様な熱さで、周りはごつごつとした岩だらけ。落ちた時よく怪我しなかったよなぁ。遠くの方から、トントンカンカン音がする。
「ここ、入口。道が二つあるけど、繋がる先は一緒だから、一人でも十分楽しめると思うよ」
適当に説明を付けて帰ろうとする少年の手をギュッと握る。少年が如何にも嫌そうな顔をしているけれど、知らんぷり。
「行くんなら、早くして」
はぁい! 少年のお望み通り、私は彼の手を引きながら音の方へと走って行った。
うわ、もっと熱い! 目の前には、真っ赤になった鉄を叩く、30~40くらいの数の真っ黒なバイキンみたいな子達。燃えたぎる様な熱さは、この子達が鉄を叩いているからだったのね。
「ボクも、こうやって叩いてた」
そうなんだ、その割に細い体してるけど……。
「ご飯、生きてける最低限しか出なかったから」
それは流石に可哀想。ここの人、一体何考えてるのかしら。それにしてもボク、このバイキンちゃんの中で一人?
「うん。人間で来たの、前例無かったみたいだから」
へーそうなんだ。あそこの空間ってさ、やっぱり生死の境みたいなとこなんでしょ? ボク、今も生死をさまよってるってことなの?
「いや。もう、あっちの世界での存在は考えられない。戻るのに時間がかかりすぎたから」
ボクも変わった子だよねぇ、まっすぐトンネル抜けようとしないなんてさ。
「そりゃあ、戻りたかったよ。でも……」
でも?
「今、言う気分じゃ無い」
困った子だね~。それじゃあもう少し進みましょうか。
「あ、駄目」
一歩踏み出すと、一匹のバイキンと目があった。途端にバイキンは立ち上がり、悲鳴にもにた奇声を発した。声を聞いて奥の方からやってきたのは、此処にいるバイキン達のでっかいバージョンみたいなお方。仕切っている方かな?
「いずれこうなるとは思ってたけど、もはやとは」
「キキキクキケケケ!」
なんかよく分からない言葉を発してる。そこそこの言語を知っている私でも全然わからない。まぁ、姿がバイキンの時点でそうなるか。適当にキクケを言ったら会話が通じるかしら?
キッキキ、クク、ケー!!! 手を鳥の様にバタつかせながら、私はバイキンの親玉に言ってみた。
「キキーッ!?」
「……学者さん、嫌い」
よく分からないけど、バイキンの親玉に一発ビンタをされた。変なこと言ってたのかなぁ。それとも適当に喋ったのばれちゃった? ビンタをされた後、親玉は片手を上げ、子分達を呼び寄せる。子分達がやってくると、皆で私と少年を持ち上げた。
「……あれ程戻ることを望んでいたのに、コッチに降りてくるとはな……馬鹿な男だ」
普通に喋れるんかいっ!!!
「巨乳よ、何事も見た目やありきたりな考えに縛られていては、先になど進めないぞ。そう。そう言った当たり前の観点からずば抜けた私こそ、僕(しもべ)からリーダーへと昇進した私」
そうねぇ。確かに今の考えは間違っていたわ。日本語、英語、中国語……エジプトの言語とか、使えるものは他にもあったはずよね。もし、次から知らない言語を喋る人がいたらどの言語で返そうかな……。
「……お前等、今すぐ蛇王様の元へ連れて行け!!」
「キキーッ!!」
親玉の合図によって、私達は更に奥へと連れて行かれた。
赤い食材ばかりの調理台、赤い服ばかりの服を作る所、仕切りの無い、赤い監獄って感じね。もう少しゆっくり見てたかったけど、どうやら向かう場所が違うみたいなので、一瞬で通りすぎてしまった。あ、今赤と白と黒のテレビあった。しかも普通に通販番組流れてた。結構過ごしやすそうじゃない?
「結構過ごしやすそう、とか思ってない?」
あら、そんなに見えちゃった? いっやだぁ。やっらしい。
「……キモい。言っとくけど、テレビ見れるのは力のある人間だけだし、他に人間がいない中過ごしていくのは相当ツラいよ」
確かにね。生活するなら、同じ生物との方が良いかもしれないわよね。そうじゃないって人もたまにいるけど。
「まぁ、学者さんも戻るなんて暫く無理だろうけど。そのまま此処にいて、本当の自分はいなくなっちゃうかもしれない」
ふぅん? でも、そうはならないんじゃないかしら。
「どうして?」
私は、絶対に帰らないといけない理由があるから。じゃ、駄目かしら?
「……どうだろう」
今まで無関心そうだった少年が、ほくそ笑みながらこっちを見た。
「ここ、入口。道が二つあるけど、繋がる先は一緒だから、一人でも十分楽しめると思うよ」
適当に説明を付けて帰ろうとする少年の手をギュッと握る。少年が如何にも嫌そうな顔をしているけれど、知らんぷり。
「行くんなら、早くして」
はぁい! 少年のお望み通り、私は彼の手を引きながら音の方へと走って行った。
うわ、もっと熱い! 目の前には、真っ赤になった鉄を叩く、30~40くらいの数の真っ黒なバイキンみたいな子達。燃えたぎる様な熱さは、この子達が鉄を叩いているからだったのね。
「ボクも、こうやって叩いてた」
そうなんだ、その割に細い体してるけど……。
「ご飯、生きてける最低限しか出なかったから」
それは流石に可哀想。ここの人、一体何考えてるのかしら。それにしてもボク、このバイキンちゃんの中で一人?
「うん。人間で来たの、前例無かったみたいだから」
へーそうなんだ。あそこの空間ってさ、やっぱり生死の境みたいなとこなんでしょ? ボク、今も生死をさまよってるってことなの?
「いや。もう、あっちの世界での存在は考えられない。戻るのに時間がかかりすぎたから」
ボクも変わった子だよねぇ、まっすぐトンネル抜けようとしないなんてさ。
「そりゃあ、戻りたかったよ。でも……」
でも?
「今、言う気分じゃ無い」
困った子だね~。それじゃあもう少し進みましょうか。
「あ、駄目」
一歩踏み出すと、一匹のバイキンと目があった。途端にバイキンは立ち上がり、悲鳴にもにた奇声を発した。声を聞いて奥の方からやってきたのは、此処にいるバイキン達のでっかいバージョンみたいなお方。仕切っている方かな?
「いずれこうなるとは思ってたけど、もはやとは」
「キキキクキケケケ!」
なんかよく分からない言葉を発してる。そこそこの言語を知っている私でも全然わからない。まぁ、姿がバイキンの時点でそうなるか。適当にキクケを言ったら会話が通じるかしら?
キッキキ、クク、ケー!!! 手を鳥の様にバタつかせながら、私はバイキンの親玉に言ってみた。
「キキーッ!?」
「……学者さん、嫌い」
よく分からないけど、バイキンの親玉に一発ビンタをされた。変なこと言ってたのかなぁ。それとも適当に喋ったのばれちゃった? ビンタをされた後、親玉は片手を上げ、子分達を呼び寄せる。子分達がやってくると、皆で私と少年を持ち上げた。
「……あれ程戻ることを望んでいたのに、コッチに降りてくるとはな……馬鹿な男だ」
普通に喋れるんかいっ!!!
「巨乳よ、何事も見た目やありきたりな考えに縛られていては、先になど進めないぞ。そう。そう言った当たり前の観点からずば抜けた私こそ、僕(しもべ)からリーダーへと昇進した私」
そうねぇ。確かに今の考えは間違っていたわ。日本語、英語、中国語……エジプトの言語とか、使えるものは他にもあったはずよね。もし、次から知らない言語を喋る人がいたらどの言語で返そうかな……。
「……お前等、今すぐ蛇王様の元へ連れて行け!!」
「キキーッ!!」
親玉の合図によって、私達は更に奥へと連れて行かれた。
赤い食材ばかりの調理台、赤い服ばかりの服を作る所、仕切りの無い、赤い監獄って感じね。もう少しゆっくり見てたかったけど、どうやら向かう場所が違うみたいなので、一瞬で通りすぎてしまった。あ、今赤と白と黒のテレビあった。しかも普通に通販番組流れてた。結構過ごしやすそうじゃない?
「結構過ごしやすそう、とか思ってない?」
あら、そんなに見えちゃった? いっやだぁ。やっらしい。
「……キモい。言っとくけど、テレビ見れるのは力のある人間だけだし、他に人間がいない中過ごしていくのは相当ツラいよ」
確かにね。生活するなら、同じ生物との方が良いかもしれないわよね。そうじゃないって人もたまにいるけど。
「まぁ、学者さんも戻るなんて暫く無理だろうけど。そのまま此処にいて、本当の自分はいなくなっちゃうかもしれない」
ふぅん? でも、そうはならないんじゃないかしら。
「どうして?」
私は、絶対に帰らないといけない理由があるから。じゃ、駄目かしら?
「……どうだろう」
今まで無関心そうだった少年が、ほくそ笑みながらこっちを見た。