恋するBread*それでもキミが好き
「すいません」
ーードキッ
初めて聞いた少し低いその声に、心臓が跳ねる。
「は、はい!」
緊張で声が裏返ってしまった。
「久しぶりだから、どれにするか迷ってるんだけど、もち……じゃなくて、松永さんのオススメある?」
「えっ!?」
今、名前言った?
「松永さん、だよね?」
エプロンに付いてるネームプレートを指差してそう言った。
あ、あぁ、なんだ……ただでさえ緊張してるのに、突然名前を呼ぶから焦っちゃったよ。
明らかに動揺した様子の私を見て、おからロールさんはクスッと笑った。
なんだろう、このズルい笑顔。
パンを選んでるときの真剣な表情は凄く大人っぽいのに、笑うと少し目尻が下がってフワッと柔らかい顔に変わる。
キュンキュンするっていう経験がない私は、この気持ちに少し戸惑った。