恋するBread*それでもキミが好き
『せっかっく取材の話を頂いたのに申し訳ございません』

そう言われたが、幸いまだいくつか候補をあげている段階だったため支障はない。

確かに俺自身も、あの店が人で溢れかえったら、と思うといい気はしない。

こんなふうに考えてしまうのは、編集者失格だ。


それに美緒ちゃんのことも……。


『美緒ちゃんにも今回はお断りするって話はもうしたんですけどね、実はあの子ああ見えて昔から恥ずかしがりやでね、本当は自分が雑誌に載るのも嫌だったと思うの。でもね……』


宮原さんの言葉を聞いたとき、あの日必死に涙を堪えてる彼女の顔が浮かんで、胸が苦しくなった。


『自分の好きなことだけは違ったわ。好きなことのためならなんでも一生懸命で、高瀬さんに頼まれたときもあの子はきっと……あらやだ、これ以上言ったらただのお節介おばさんね』


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