恋するBread*それでもキミが好き
私はその全てに、首を横に振って答えた。

「そんな人じゃない……」


高瀬さんの言葉はいつも優しかった。

適当に付き合ったり、あしらったりも出来たのに、ちゃんと本音を言ってくれた。

化粧もせずにパン屋でがんばる私のことを、そのままが一番綺麗だって言ってくれた。

すごく誠実で、真面目で……。

「高瀬さんがどういう人なのか、そんなの美緒が一番分かってるでしょ?」

真紀の言葉に涙が止まらなかった。


「美緒が急に不安になったのはさ、彼に近づけたからなんだよ。ただ遠くから見てドキドキしてるだけなら、そんな気持ちにはならない」


横で泣いている私の手を、真紀は優しく握ってくれた。

「美緒は素直で真っ直ぐで、自分の気持ちを誤魔化したりない。でも本当は不安だってことも、自分に自信がないってことも、私は全部知ってるよ。
それでも好きな人を思って頑張れる美緒を羨ましくも思うし、尊敬もしてる」


「真紀……ありがとう、もう、真紀が優しすぎるから、涙止まんないよ……」

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