海が見える窓
あたしは顔を上げる。
おそらく40代くらいであろう部長の目尻には皺が少し寄っていて、笑うと尚更目立っていた。
「そうそう、君と同じく今日から入社した社員がいるんだった」
…え?新入社員はあたしひとりじゃなかったっけ?
そんな疑問を頭に浮かべながら、部長が促したデスクを見る。
「部長、一応入社ですけど転勤です」
少し低い声にドキリとした。
あたしよりもいくつか年上であろうその男性は、今していた作業を止めてあたしたちの方を向いた。
「あ、私、水瀬く…」
「水瀬胡桃さんでしょ?俺は川本拓海(かわもと たくみ)
よろしくね」