片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
カサブランカの花言葉は『永遠の絆』
二人の門出を祝うには最高の花だーーーー・・・
俺達には酷な花言葉だな。
美しいウエディングドレス姿の夏芽。
今日の出来事は全部夢だ。
――――――醒めない夢ならいいのに。
「夏芽」
「何?冬也」
「…時間だな」
「うん」
俺だけを愛して欲しいと懇願すれば、夏芽は何で言うだろう?
でも、俺が歩む家元の道は何も知らない夏芽には窮屈な世界かもしれない。
―――――560年の伝統を継ぐと言うのは並大抵の努力では出来ない。
「俺はこの日を永遠に忘れないと思うよ。夏芽」
「冬・・・也?」
「俺がお前の全部を手に入れたようなもんだ。お前は俺に勝てない。そうだろ?夏芽」
傲慢な物言いに夏芽は顔を顰めた。
夏芽にとって俺は目の敵。ライバル。俺はお前を人生のパートナーに選びたいのに残念だ。
「皆は何も知らない。今日はキチンと俺の妻を演じてくれよ」
俺は夏芽のベールをあげて艶やかな美しい赤い口許にキスを落とす。
愛はないけどキスの味は蜜な味がしたーーー・・・