片恋シンデレラ～愛のない結婚は蜜の味～

私達は引っ越し屋さんよりも先に到着してしまい、下のカフェテラスでコーヒーを飲みながら待つコトに。


日曜日の午前だと言うのにカフェテラスは満席で私達はカウンター席に並んで腰を下ろした。


「スポーツジム、カルチャーセンター、スーパーもあるらしいから。便利な所だと思う」

冬也は、家元から貰ったマンションのパンフレットを見せてくれた。


「冬也様ですよね」

一人の中年女性が冬也に話し掛けて来た。


「私、このマンションのカルチャーセンターで『氷見流緑川派』の講師を務めている榎並と申します」

「え、あ・・・初めまして・・・」

冬也は門下生だと知り、立ち上がって丁寧に腰を折り挨拶した。
私も冬也に倣い、立ち上がり頭を下げる。


「隣の方が奥様ですか？」


「妻の夏芽です」


「ご紹介頂きました妻の夏芽です。よろしくお願いします」


「家元からこのマンションに越して来るコトは訊いておりました。今日だったんですね」


「はい。今後ともよろしくお願いします。榎並様」