片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「おはようございます」

一匹のミニチュアダックスフンドの散歩中の女性が俺達に挨拶して来た。


「おはようございます。新井さん」


女性はそれ以上は何も言わず、好奇な目線を送りながらすれ違って行った。


「どなたですか?」


「緑川さん達と一緒の50階フロアに住む方です。元は『星凛堂』の副社長秘書を務めていました」


「副社長秘書ですか…じゃ副社長とも顔見知りでなんだ」


「拓真さんが昔お付き合いされていた方です」


副社長の元カノが同じタワマンの住人とは世間は意外と狭い。



「私達が結婚した後、直ぐにお父様が頭取を務めていた帝和銀行にお勤めの男性と結婚して、今は3歳の男の子の母親です」


副社長への当てつけの為に結婚したようなもんだな。
元カノは結婚して順調に子供も生まれたんだ。


小陽さんの瞳は寂しげで涙を堪えてそうにも見えた。


不妊の原因は副社長に原因があって、小陽さんには何の落ち度もない。弟嫁の奈那子さんは既に二人目で内心は兄嫁として焦っているんだと思う。

当の副社長も。

でも、これは夫婦間の問題で事情を知る俺達はなるべく子供のコトには触れないでおくしか出来ない。

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