片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「神宮寺永遠・香音夫妻の所にも子供がデキたらしい」


「永遠さんって奈都也さんの所の奥さん・愛さんのお兄さんですよね」


「うん」

「犬3匹じゃ孫の代わりにはならないようだ」

拓真さんは寂しげに笑って缶ビールを煽る。

足許に転がった缶ビールの空き缶。

彼の革靴に当たって倒れ、コロコロと転がった。

私は空き缶を拾い上げて、拓真さんに渡す。

「昼間から何飲んだくれてんだって感じだろ?」

「あの3匹の犬達は流産した赤ちゃん達の代わり身だってコト知ってます。でも、小陽さんはまだ、赤ちゃんを諦めていない。一人で頑張って不妊治療しています」


「小陽のヤツ…そこまでお前に話をしたのか・・・夏芽さんには全部筒抜けだな」


「拓真…さん?」


偶々、私達の前を小陽さんが通り過ぎようとしたが、拓真さんの姿で足を止めた。


「何だ?小陽お前、出かけていたのか・・・」


「貴方はここで何をしているんですか?」


「夏芽さんと逢引き」


「拓真さんっ!?私は偶然、通りすがっただけですよ。小陽さん。誤解しないで下さい!!」


「分かっていますよ」


「…小陽…俺は会社を辞める」



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