片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「貴方は行かないんですか?」
「私は後片付け頼まれたし」
華道に無知な私が付き添って粗相があったらいけないし、できるならこのまま黒子に徹したいと思っていた。
「湯呑みを洗うだけでしょ?私がしておきますよ」
「いえ、香苗さんのほうこそ、行かなくていいんですか?」
「私は別に・・・門下生として手伝いに来た母に付き添っただけだし」
私たちは奥にある給湯室で一緒に湯呑みを洗った。
香苗さんは小陽さんと同じ美人なタイプだけど、何処か冷たい雰囲気があった。
私を敵対視しているそんな感じに包まれていた。
「夏芽さんって・・・華道の世界と無縁だったようね」
「はい、でも・・・冬也に教わりながら、日々精進しています」
氷見流緑川派の次期家元の妻として精進はしているつもりだ。
「精進ね・・・母から訊きましたけど、貴方の母親と奈都也さんって・・・不倫関係にあったんでしょ?」
香苗さんの耳にも届いているんだ。
否定も肯定もできず、押し黙った。