片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「父さんが緑川家を出たのは俺が生後10ヵ月のコト。父さんと爺ちゃんの間に何があったのかは知らない。でも、俺が絡んでいるのは明らかだ」

冬也の声が切なげに響くが、当の本人はしんみりとしたムードをかき消そうとワザと明るく振る舞った。

「このカルボナーラ美味しいぞ。夏芽お前も食えっ」

「あ、うん」

私は取り皿にカルボナーラを乗せた。

日本のカルボナーラは生クリームを使用されているが、イタリアの本場のカルボーラはパンチェッタとパルメザンチーズとシンプルな味つけ。

でも、塩気の強いパンチェッタとチーズの絡んだ味は濃厚でワインも進んだ。

オーダーしたトマト丸ごとを使ったカプレーゼとマルゲリータも来てテーブルはご馳走で埋め尽くされた。

「このマルゲリータも美味い」

冬也はマルゲリータを一口齧った。

「そう言えば、お前と二人で飯を食うのは初めてだな」

「そうね・・・」

私と冬也の周りにはいつも同期や同僚が居た。

改めてそう言われる背筋に緊張感が走った。

< 26 / 359 >

この作品をシェア

pagetop