片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
冬也にも実力はあると思う。時が全てを解決してくれるかもしれないが、今の状況では『緑川派』が分裂し兼ねないし、冬也は私の為に華道の道を捨ててしまう。



「栗原さん…私、冬也と離婚するかもしれない」


「離婚?」


「私に560年の伝統と格式は背負いきれない」

母娘代々に渡り、『緑川派』を支えて来た香苗さんの方が冬也の妻に相応しい。


「折角両想いなったのに、冬也を捨てるのか?」

「だって今のままでは・・・」


「今晩は遅いし、夏芽さんもう寝たら?」


平沢さんが話を終わらせ、私をゲストルームに案内した。


「シャワールーム付きの部屋だから・・・シャワー浴びるならバスタオルとバスローブ用意するけど」


「いえ・・・結構です」


「じゃおやすみなさい。夏芽さん」

平沢さんは再び星苑さんボイスで私の耳許に囁きかけ、部屋を出て行った。


夢中で訊いていた星苑さんボイス。


彼は星苑さんとは引けを取らないリアルなセレブ。

スラリとした長身に聡明な瞳と端正な顔。

容姿も星苑さんに似て自信に満ちている。






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