片恋シンデレラ～愛のない結婚は蜜の味～

「それよりも…腕離せよ」

「あ…ゴメン」

夏芽は俺の腕を解放し、バックを探り始める。
｢何してんだ？」

｢お会計・・・いくらだった？」

「あ、いいよ。今夜は俺が奢ってやるよ。誘ったのは俺だし」

「本当にいいの？」

夏芽は念を押し、俺と目を合わせる。

俺と夏芽の背の高さが彼女の視線を上目向かせた。俺は夏芽の上目遣いに心臓を跳ね上げる。
程よく柔らかそうな胸といい、この上目遣い。

何だか俺の本能が目覚めそう。
俺は夏芽に背を向けて本能と格闘した。

「それよりもお前…俺と居る時に他のオトコと電話とは・・・いい度胸してるな」

「私達って…偽装結婚・・・よね」

「そうだけど・・・」

残念だけど…俺と夏芽は偽装結婚。

｢じゃ別に他のオトコとも続けていいワケよね」

「あ・・・まぁ・・・」

俺を放置して他のオトコと電話するオンナ。
夏芽の方が俺よりも器用に割り切り、男と上手く付き合っている。
キスは下手だけど、男を夢中にさせるベットテクニックは持ち合わせているのかな？

「結婚生活に当たってキチンとしたルールを決めましょう」

「ルール？まぁいいけど・・・」
元々俺達はライバルの仲で、上司となった俺に仕事上は従っているが、それは決して降参したワケじゃないんだ。

負けん気の強い夏芽だ。機会を伺っているんだろうな。

今ここで本当のキモチを言えば、偽装結婚は撤回される。

夏芽と結婚すれば、自分のモノになるかと思ったが簡単には手に入らないかも。

俺はそんな高嶺の花とも言える女に惚れたのか・・・