片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「家元に奈都也さんと会うように言ったのは私だ」

廊下の突き当りある共用の休憩スペースの椅子に腰を下ろした。


「敦司様が?」


「冬也君には隠していたが、家元は大腸癌を患い、カラダのあちこちに転移している」


「爺ちゃんの命はそう長くないの?」


「そうだな。家元には心残りのないよう逝かせたい。絶縁していた息子の奈都也さんとの復縁はその一つだ」


「今年の生け始めが最後だったかもしれないんだ」


「そうだな。中止になってしまったのが非常に残念だ」

俺と夏芽は離婚。

正月の恒例行事の生け初めは中止。


爺ちゃんには迷惑を掛けてばかりだな。


「そう落ち込むコトはないよ。冬也君」


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