片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「私が継いで来た『緑川派』は私の代で終わりだ。私の意に添わない者は去っても良い。
門下生に限り分派を認める。冬也お前は奈都也と共に新しい『緑川派』を築くんだ」


「爺ちゃん・・・」


「家族を犠牲する伝統は私の意に添わない。
冬也お前には幸せになって貰いたい・・・」



「和也・・・さん」



「私はもう先がない。夏芽さんと離婚して稽古に全く身が入っていないと敦司君から報告受けていたぞ・・・」


「ゴメン・・・爺ちゃん」



「夏芽さんがスキなんだろ?」


「爺ちゃん・・・」



「私はいつでも孫のお前の幸せを祈っている・・・」


「爺ちゃん…俺・・・」


俺は両手で瘦せこけた爺ちゃんの手を包む。


骨と皮だけの皺くちゃの指。


爺ちゃんはこの手で50年。伝統を守り抜いた。

でも、夏芽にとって俺はゲスな男。

今でも夏芽は俺のコトを愛してくれているだろうか?
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