片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「母さん、ビールくれ」

「はいはい」

颯が10時過ぎに帰宅。

颯は拓真さんの紹介で大手薬品メーカー『ソーマ』開発研究部に就職し、毎日白衣を着て新薬の開発に取り組んでいた。


「今日のメシは何?」


「あんたのスキなカレーよ」

妊婦の私は家族とは別メニューで減塩食。味が薄く、濃い味が好きな私にはマズいとしか言いようがない。


私はソファに腰を下ろし、ドラマを観ていた。


颯は、ダイニングテーブルで缶ビールを飲みながらカレーライスを食べる。


カレーの香ばしい匂いがリビングにまで漂って来た。


お腹の子の為に我慢を強いられる私。


「姉ちゃん、検診の結果はどうだったの?」


「順調よ」


「それはよかった」


「でも、ちょっと血圧が高いから…更なる減塩食を強いられて、機嫌が悪いから…颯も気を遣ってあげてね」


「わかった・・・」

「お母さん、余計なコト言わないで」

「冬也君には言わないから安心して・・・」

< 337 / 359 >

この作品をシェア

pagetop