片恋シンデレラ～愛のない結婚は蜜の味～
「こんなコト話せるのは拓真さんしか居ない・・・」

「冬・・・也」

「折角の飲み会なのに…すいません。飲めなくて・・・」

「いいんだよ。俺も赤ちゃんの心音が下がったから、緊急帝王切開すると言われた時は戸惑った。
小陽と赤ちゃんのどっちかが死んだらどうしようって・・・どっちも助かって欲しいと思ってるけど。どちらかの命しか救えないと言われたら、俺は間違えなく小陽を救ってくれと言うだろうなぁー」


「拓真…さん？」


「父親失格だよな・・・」

「俺は・・・」

「こんな風に本音を言えるのはお前だけだ。冬也。お前とはいい友達になれそうだ」


人当たりが良く交友関係も派手で友達が多い拓真さんだが、本音が言い合える人間が居なかったのか。


「俺の周囲の人間はエリートばかりで弱みなんか見せれば、直ぐに見下されてしまう。だから、誰にも不妊治療のコトは言えなかった。
でも、こうして小陽が俺の為に最後まで諦めず陽真を産んでくれて、両家にも顔が立った。俺の中での一番の存在は小陽なんだ。陽真を産んでもそれは永遠に変わらない・・・」


「俺なんて生まれる前から・・・夏芽が一番だ」

「お前に安産祈願のお守りやるよ」

拓真さんがビジネスバックから紺色のお守りを出して来た。

「ありがとうございます」

「お義父さんの頼みでお前を飲みに誘った。夏芽さんのコトで悩んいると訊いてさ」

「そうだったんですか・・・」



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