片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
私は少女の凄い力にグイグイと押され、瞳を見開いた。


薄暗い部屋の中に横たわる。

口には気管確保のチューブが挿入され、声が出ない。

「夏芽…気が付いたのか?」

冬也の顔が私の瞳に映り込んだ。冬也の瞳からは大粒の涙が零れ、頬を伝う。


私の瞳にも涙が溢れる。
瞼の焦げる感覚と冬也が涙を拭う指先の温もりに生きていると実感した。


「赤ちゃんは無事に生まれた。女の子だ・・・」


あのカンナの花畑に居た少女は私と冬也の娘だ・・・


三途の川を渡ろうとした私は家元と娘に救われたのだったーーー・・・



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