片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
私は颯がこの家を出て行った理由を知っている。

あれは偶然だった・・・


颯はこの家を出て全寮制の高校への進学を希望していたが、お母さんは地元の公立の進学校への進学を強く勧めていた。


だから、颯の選んだ進路に猛反対。二人は連日進路のコトで揉めていた。


颯は私よりも頭が良く、地元のトップ高に合格できると実力は十分にあったが、お母さんの勧める進路には首を縦に振らなかった。


12月の進路決定の三者懇談を控えた夜も二人は言い争っていた。


「どうして、父さんが俺を母さんの元に送り返したか知ってる?
俺は父さんの子供じゃないんだよ!母さんが不倫して生まれた子供なんだよ…だから、俺は一分一秒でもこの家に居たくないんだ!」



颯の悲痛な大声がリビングに響いた。


私は部屋の外でそれを訊いていたーーー・・・


颯が私と同じお父さんの子供じゃない。中学の国語教師と言うお堅い職業のお母さんが不倫して、颯を産んだなんて全く信じられない話だった。



お母さんは颯の決めた進路に反対しなくなった。そして、颯は出て行き、この家には寄り付かなくなってしまった。







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